日本でもできなくない!

胸を張って 募る善意2011年1月21日



自閉症児への慈善活動に取り組むエルス=AP

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 日本では「タイガーマスク運動」が広がっている。実名を名乗らず、寄付金や文房具を養護施設などにそっと贈る善意のチャリティー運動は、世知辛い世の中にパッと咲いた心温まる花のようだ。

 一方、米ゴルフ界では南ア出身のアーニー・エルス(41)が自閉症の子供たちのための施設建設を目指し、ゴルフのチャリティーイベントを開催しようとしている。

 エルスが長男ベンくん(8)の自閉症を公表したのは2008年3月だった。「プロゴルファーとして知られている僕の名前を自閉症の子供たちやその家族のために生かしたい。障害の研究費用にも貢献したい」

 そんな願いを込めて、彼はそれまで隠してきた長男の自閉症を明かし、自らのゴルフバッグに「オーチズム・スピーク(自閉症は語る)」と記した。自閉症のケアや教育が受けやすいようエルス一家は米フロリダ州に移住。同時に彼は、自閉症のための施設を創設しようと心に決めた。

 昨年は1年間で100万ドルの寄付金を集めた。だが、施設建設に必要となる総額は3千万ドル。もっと効果的に寄付金を募らなければ……。そこでエルスは独創的なチャリティーイベントを考案した。

 2人1組のチーム戦を全米32か所で開催。各チームはエントリーの際、最低2500ドル以上の寄付が義務付けられる。そして、勝ち抜いたチームだけがラスベガスで開かれる最終戦へ進み、エルスと一緒にプレーすることができる。だが「勝ち抜く」条件は、ベストスコアを出すか、あるいは最高額の寄付金を提供するかのどちらかだ。さらに、最終戦のエントリーには最低1万ドルの寄付が求められる。

 ある意味で「地獄の何とかも金次第」のような仕掛けだが、エルスは誇らしげにイベントの詳細を発表し、参加者を募っている。「今年はこのイベントで300万ドルを集め、施設を建てる土地を購入したい。そして来年には工事を開始。青写真はきっちり描けている」

 タイガーマスク運動は、奥ゆかしさを美徳とする日本の心。「それならば私も」と続く善意の輪が、みな匿名のまま広がっているところが、さらに日本らしい。そんな日本流とは対照的に、エルスのチャリティーは自らの名を高らかに掲げ、活用し、「たくさんのお金を寄付してね」と叫ぶストレートでダイレクトな実利型の欧米流だ。

 名を伏せるチャリティーと名を語るチャリティー。形はずいぶん異なるけれど、どちらの善意も一番必要としている人にしっかり届いてほしい。そして、善意を受け取った人々の笑顔が、そのとき限りではなく、ずっとずっと続いてくれたらいいなと願う。(在米ゴルフジャーナリスト)

テーマ : 自閉症児の親 - ジャンル : 福祉・ボランティア